行先不明 - 長野岐阜富山新潟、当てなきドライブ -

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「ポスト黒川を見つけに行こう!」

そんな友人Hの一言で今回の旅は始まった。
大学からの付き合いで、たまたま時を同じくして九州に移った彼とは、九州を散々遊び歩いた。
遊び歩いたといっても対象は美食、美酒、そして温泉。飯を食らい酒を飲み、探し当てた名湯は数知れず。
温泉大国九州に匹敵する名湯を関東に探すべく、車検から帰ってきた愛機のシェイクダウンも兼ねて、とりあえず山の方を目指すことにした。

7時に起きてのんびり家を出ると、中央道は既に渋滞していた。九州では渋滞にハマることなど皆無に等しかったから、つくづく関東はやりにくい。
相模湖付近でようやく流れが良くなった。甲府南インターで一旦高速を降り、東花輪という駅で友人と落ち合った。彼も今は実家の静岡・富士市に帰っていて、身延線の特急列車でやって来た。甲府という場所は今後我々にとってキーポイントになるに違いない。
中央道に戻ってしばらく走り、八ヶ岳PAで作戦会議を開く。何せ温泉に入ること以外何も決まっていないのだ。しかし彼との旅はいつもこんな感じだ。

「長野と岐阜の県境辺りの温泉をハシゴして、松本まで戻って長野の北の方に…」
「・・・来た道引き返すの嫌いなんでしょ?」
「良く分かっていらっしゃる!」

こうして県境を飛び越え、日本海を見に行くことになった。彼の旅はいつもこんな感じだ。
松本で高速を降り、国道158号線を上高地方面へ向かう。この時点で昼近く。
「信州と言ったら蕎麦だ!」ということで、最初に目に入った蕎麦屋に入ることにした。
「そば庄」鵬雲崎店。蕎麦もさることながら、窓際の席からは水澱ダムが一望できて良い店だった。
白骨温泉 橋の上から見える乳白色の温泉
腹ごしらえも済んだところで温泉探訪。まずはR158を少し進んで横道に反れ、乗鞍高原を経由し白骨温泉へ。
名前の通り白く濁った良質の湯と、真上から丸見えなくらい開放的な公共の露天風呂がある。雰囲気もどことなく黒川に似ていて、いきなり当たりを引いた気になれた。 白骨からR158への連絡路は通行止で走れず、帰りも乗鞍を経由してR158へ戻る。紅く色づき始めた木々の中のドライブは、ひんやりとした空気と相まって爽快だった
上高地への入口の前を通り、安房峠を一直線に貫くトンネルを抜けると岐阜県に入る。安房峠の旧道は去年の夏、インテRで走ったところで、旧道ではつづら折れの峠道を延々上り下りしたところを、呆気なく通り過ぎた。
池?庭?否、風呂 公園の入口のよう
トンネルを抜けてすぐに分岐があり、R471に進路を変えて少し走ると奥飛騨温泉郷に至る。 奥飛騨温泉郷とはこの辺にいくつかある温泉の総称で、その中でもHの勧めで、国道から少し分け入ったところにある新穂高温泉へ。
旅館「水明館 佳留萱山荘」に併設されている露天風呂はプール顔負けの広さを誇り、これは勧められるがままに来て良かったと思えた。
更にもう一箇所。同じく奥飛騨温泉郷は栃尾温泉、荒神の湯に立ち寄った。一見して公園のような雰囲気だが、写真の竹柵の奥にこれまた開放的な露天風呂がある。料金は徴収されず、志でお金を払う決まりになっている。もちろん払ったが。
この後R471→神岡→R41と走り、とうとう日本海側の富山に着いたのは19時頃。二人泊まれる宿を駅前に探し、近所の居酒屋で日本海の海の幸に舌鼓を打った。
1日の走行距離はおよそ400km。このくらいが今後の行動半径の目安になりそうだと思った。
交通の難所、親不知 普通列車がやって来た
翌日9時に目が覚めた。いささか寝過ぎたが、特に焦るでもなく身支度を整え、宿を出た。
富山市の郊外にある富山インターから北陸道に乗り、朝日インターで降りて下道の国道8号線をゆく。少し走ると県境を越え、新潟県に入った。
平地はどんどん狭まり、遂には海岸線と断崖に沿うように道が伸びていく。景勝地、そして往来の難所として名高い親不知である。
多くの場所が落石除けのシェルターで覆われているものの、ずっと横に日本海を見ることができる。鉄道や高速はトンネルで通過してしまい、この景色は下道でしか見られない。
JR北陸線の親不知駅で少し寄り道をした。狭い平地に作られた細長いホームが印象的な駅だった。駅内を散策していると、数少ない普通列車がたまたまやって来て、数人の乗客を乗降させて去っていった。特急街道の北陸線も、こんな景色だけを切り取って見ればローカル線そのものだ。
上信越道を長野方面へ 信州の山々を望む 地獄谷 勢いよく噴き出すのは熱々の温泉
そのまま国道8号を走って、糸魚川インターから再び北陸道に乗った。上越ジャンクションから上信越道に入って再び長野県、信州中野インターで高速を降りる。
志賀高原方面へ走り、湯田中温泉の辺りから細い山道を分け入っていくと地獄谷という場所がある。
不便な場所にも関わらず、猿園があって観光客で賑わっていたのだが、猿にはあまり興味のない我々2人は温泉に入った。
後楽館という宿の風呂が15:00まで入浴できて、これまた野趣に富んだ露天風呂だった。猿が入りに来ることもあるらしい。
湯船には湯の花が浮かび、源泉は熱いくらいで、このあたりの温泉の質の高さを窺い知ることができた。
すっかり木々が色付いた志賀高原 国道最高所、渋峠
湯田中から志賀高原を通り、群馬・草津へ至る国道292号線は爽快なドライブルート。急峻なヘアピンやループ橋で山を登っていくにつれ、山の色付きがだんだんと鮮やかになった。
するとある地点を境に今度は色が失われていき、どんどんと高度が上がっていることを実感した。
長野と群馬の県境、渋峠は日本の国道の最高地点。冬期は通行止になるこの道、走れるうちに走っておいて良かったと思う。
ここから有料道路の浅間白根火山ルートを経由し、多少の渋滞は覚悟のうえで軽井沢から高速で帰ろうと考えた。…が、碓氷軽井沢インターに至る道が既に混んでいたので、とりあえず国道17号で峠を降り、松井田妙義から高速に乗った。しかし間もなく渋滞に巻き込まれ、ラジオの交通情報から流れたのは「鶴ヶ島まで50km」。嫌気が差し、藤岡で高速を降りて下道で帰った。下道が流れていたのは幸いだったが、まったく関東はやりにくい…。

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【おわり】


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