シベリアの冬を歩く (1) - シベリアの首都ノヴォシビルスクと、極寒の地ヤクーツクへ -

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自宅最寄りのドミトロフスカヤ駅からパヴェレツカヤ駅へ地下鉄を乗り継いで行き、22:00発のアエロエクスプレスに乗った。
モスクワには空港が3つある。モスクワ赴任の際に降り立った、北部に位置するシェレメチェヴォ(SVO)。かつてシベリア横断した際、モスクワからウラジオストクへ飛ぶ際に利用した、国内線メインのヴヌコヴォ。そして多くの海外キャリアが利用し、JALも乗り入れている南方のドモジェドヴォ(DME)だ。今回はそのドモジェドヴォから飛び立つ。これで3つの空港全てを利用したわけだ。
エクスプレスは空港までを45分ほどで結んでいる。SVOの35分と比べ、決してアクセスがいいわけではないのだが、かつてのSVOはサービス、施設ともに最低クラスの悪名を誇り、そのせいか多くのキャリアがDMEに流れたそうだ。現在はSVOの状況も改善され、空港間のサービス競争も活発になってきた。
列車を降り、空港入口でセキュリティチェックを受ける。テロを警戒して、ロシアの空港は立ち入りだけでもチェックを受けなければならない。去年冬にDMEで起きた爆弾テロは記憶に新しいところだ。
出発ロビーの一番手前側にS7航空(エスセブン、シベリア航空とも)のカウンターと自動チェックイン機があり、自分で搭乗手続きを行うことができた。
出発案内によれば、ノヴォシビルスク行きの0177便は搭乗ゲートが変更になっていた。変更先のゲートに行くと、ゲート横のディスプレイには他の便名が表示されていて、遅れているのだろうかと思いながら、表示が変わるのを待った。余裕綽々で、ゲート隣のバーでビールを頼みつつ。
しかしだんだん妙に思えてきた。前の便が遅れているなら、同じ便の乗客が少なからず待っているはず。しかしゲート周辺にそんな乗客はいないばかりか、次々とゲートを通り抜けていく。まさかと思いゲートの女性に尋ねると、まさに0177便の搭乗中だという。誰もディスプレイの表示になど気を留めていなかったわけだ。慌ててビールを飲み干し、ゲートを通過したのは言うまでもない。
バスとタラップとで搭乗した機材は、S7のコーポレートカラーである黄緑一色のA319だった。ロシアのフラッグキャリアはアエロフロートだが、国内線ではS7が一番のシェアを誇る。S7はエアバスとボーイングに機材を統一しており、サービス内容でも優位に立っているということなのだろう。
何事もなく0177便はDMEを離陸した。機長のアナウンスによれば、飛行時間は予定より短い3時間40分程度、そしてノヴォシビルスクの気温は-16度であるという。モスクワは0度を上回っていたから、どんな寒さかと想像を巡らせる。
シートピッチは広く快適だったが、機中泊は苦手でなかなか眠れない。離陸後1時間ほどして出された機内食を平らげたあと、少しでも寝ようと思ったが寝つけなかった。そうしている間に着陸前の水のサービスが始まり、結局一睡もしないままノヴォシビルスク、トルマチェヴォ空港に到着した。
無事着陸すると、まばらながら客室から拍手が起こった。着陸に成功すると拍手するという話は本当だったらしいが、この後の行程でお目にかかることはなかった。
モスクワとの時差は3時間、現地時間で午前7時前である。外はまだ真っ暗だったが、とりあえず街に出ようと思った。一歩建物から外に出ると、鼻が一瞬にしてむず痒くなる。俗に言う「鼻毛が凍った」のだ。モスクワとは異質の寒さだ。
ノヴォシビルスク駅まではバスで30分ほどで着いた。日の出まではしばらくあるだろうと思われ、暗い中を歩き回っても収穫は少ないだろうから、空が明るくまで駅の待合室で過ごすことにした。睡眠不足を少しでも解消すべく、ベンチでウトウトして時間を潰す。

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