バルチック・ジャーニー (2) - バルトの一国リトアニアと、ロシア領の飛地カリーニングラードへ -

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朝食のメニューにブリヌイ(ロシア風パンケーキ)があった。他の料理を見ても、どことなくロシアの匂いが漂う。距離が近いだけあって影響が強く残っているのだろうかと思ったが、これから西へ行く(ロシアを離れる)に従ってどうなるか、気にしてみようと思った。
天気は相変わらず芳しくなく、気温も大分低かった。駅まで歩くのは少し難儀だと思ったので、手近なバス停からバスに乗った。バスは鉄道駅横のバスターミナルに着き、すぐにトラカイ行きのバスに乗り換えることができた。
トラカイはヴィリニュスから西へ28kmほどのところにある、人口およそ5,000人強(Wikipediaより)、大小の湖に囲まれた、静かで小さな町である。
湖畔の道を歩き始めるが、小雨が降り寒いくらいだったので、途中のカフェでコーヒーを飲んで温まった。温度計によれば気温は9℃…道理で寒いわけだ。
更に歩くと、ガルヴェ湖に浮かぶ島に築かれたトラカイ島城が見えてきた。陳腐な例えかもしれないが、RPGに出てきそうな「城」そのままの雰囲気である。湖上に浮かんでいるかのような佇まいが美しい。
古くは14世紀の建造とされ、今の町の雰囲気からは想像もできないが、その頃のトラカイはリトアニア大公国の政治・行政上の中心地として繁栄を極めたという。
その後トラカイの衰退とともに城も荒れるに任され、長らく廃墟の状態が続いたのち、現在の姿に再建されたのは独立後、90年代のことだそうだ。その間、この町もまた様々な要因に翻弄され続けた。
リトアニアが歩んできた歴史が刻み込まれた場所−そう言っても過言ではあるまい。

(※参考:Wikipeda「トラカイ」「トラカイ島城」)
トラカイから次の目的地カウナスまで直接バスで行くプランもあったのだが、バスの時間や昼食などを考えて、いったんヴィリニュスへ戻ることにした。
昼食は駅前のマックで済ませ、改めてカウナス行きのバスに乗った。20人乗り程度のミニバスだったが、シートは意外と広く快適だった。
高速道路を一路西へ、カウナスまでは約2時間の旅だった。カウナスはリトアニア第二の都市、第二次大戦前は首都が置かれていた時期もあった。
まずは昨日同様、宿を探してチェックインすることにした。ホテル"KAUNAS CITY"は目抜き通りのLaisves aleja沿い、観光や食事にも便利な位置にあった。そしてカウンターの男性は英語で話しかけてきた。ヴィリニュスより英語の通用率が高い…のだろうか。
部屋に荷物を置いて、ネットで観光スポットの場所を調べたあと、身軽な格好で再び外に出た。
地図を頼りに目的地の近くまでやって来たが、ここで道が分からなくなった。右往左往する日本人2人組を見かねて、近くを歩いていた女性が声をかけてくれた。この女性、我々が目的地を告げるなり(ロシア語で…つまりY氏任せだが)近くの子供を捕まえて道を聞いてくれたばかりか、本当の近所まで付き添ってくれた。感謝感激である。
さてこうして訪れたのは杉原記念館、かつてカウナスが首都であった頃、日本国総領事館として使用された建物である。時の総領事杉原千畝は、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人の人々に対し、日本の通過ビザを発給し、脱出を支援したことで知られる。この記念館はその功績を讃えたものだ。
時は戦時下、本国そして同盟国の意向に背いてまで己の信念を貫き通した。それがどれほど困難なことは計り知れない。杉原氏自身、外交官としては誤りだったかもしれないと述べている。それを理解した上での勇気と決断には、やはり敬意を表さずにはいられない。
また、この場所を綺麗に大切に守り続けるカウナスの人々にも感謝したい。
リトアニア・カウナス、日本人にとっては馴染みの薄いこの地で起きた出来事を、多くの日本人に知って欲しいと思う。
今度は旧市街の方へ歩を進めた。ヴィリニュス同様、カウナスにも歴史的な建物が立ち並ぶ一帯がある。
ここを通り過ぎて旧市役所を眺め、更に先へ進むと、これまた中世の雰囲気漂うカウナス城に辿り着いた。14世紀、市内を流れる二つの川、ネムラス川とネリス川の合流点に建てられたものだ。川沿いに城壁が伸びているのは、川からの敵軍の侵入を防ぐためだろうか…と想像する。
帰り際、食事のため旧市街のレストランに入ると、メニューにビーフステーキを見つけた。そう言えばしばらく、ステーキというものを食べていない。リトアニアの物価はロシアより大分安く、ちょっと贅沢しても大した痛手にはならなかろう…と思って、Y氏ともどもステーキを注文した。久々に食べる味だった。

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