そしてまた、北を目指す (5) -東北、北海道ツーリング-

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迷惑にならないようにと早く出るつもりだったが、朝くらい食べていけと言われ素直に甘える。
朝のラッシュが始まりつつある札幌市内を抜け、国道231号線で石狩に入った。厚田、浜益の両村を併合した石狩市というのが実に広く、延々と市内である。
かつての浜益村内のスタンドで給油した。15.6km/lとなかなかの好成績だった。
この道も引き続き、断崖がそのまま海に落ち込むような地形が続く。その中でも境界を飛び越え、増毛町の雄冬は陸の孤島、西の知床とすら呼ばれる地域である。
雄冬岬で車を停める。数々の困難を乗り越え、ようやく道を切り開いたと記念碑には刻まれていた。この一帯に住む人々にとっては悲願であり、文字通りの生命線であるに違いない。
雄冬を過ぎて増毛町の中心に入ると、ここからの地形は一転してなだらかになった。漁村が続き、車の往来も多くなってきた。
そして留萌市に至る。留萌はこのあたりの日本海沿岸最大の町、そして唯一の「市」である、国の機関も置かれる行政上の中心地ともいえる。
留萌からは国道232号線に入り、一気に最北の地稚内を目指していく。海岸線がこれまでの入り組んだそれとは打って変わって、道路と同じ方向へ真っ直ぐに伸びて行く様は、まさに地図で見るところの地形そのものだ。
天売島・焼尻島への玄関口でもある羽幌で昼食を取るべく、道の駅「ほっと・はぼろ」に車を停めた。ここに「サンセットプラザはぼろ」という施設があって、レストランや温泉が入っている。すると「えびタコ餃子」なるご当地グルメの幟が立っていて、実に気になった。しかしレストランはあえなく満席であった。商売繁盛はもちろん喜ばしいことなのだが。
諦めきれずに、温泉に入って時間を潰すことにした。風呂は海と反対側にあり、ありがちな日本庭園を眺めながら入浴したのだが、それなりに寛いだ。
改めてレストランに向かうと、すぐに席に案内された。少し迷ったが、餃子と鰊そばを両方頼むことにした。先にそばが出てきて、鰊そのものと、ダシが強烈に沁み込んだつゆが美味だった。少し遅れて餃子が出てきたが、これは餃子の形をしたたこ焼きのような感じがした。誰もが考えそうで考えなかったこの一品、なかなかいい。
再び日本海に沿って北上していき、しばらく走った天塩から道道106号線に入った。今回のドライブのハイライトであり、またここを走ることが最大の目的だったと言ってもいい。
原野の中を、ガードレールも標識もない道がずっとまっすぐ伸びて行くのだ。北海道ならではの景色、そして最北の地に至るこの場所まで来ないと味わえない景色だ。車の写真を何枚も撮る。学生時代にデルソルでも走った道だったが、今のシビックともこの景色を分かち合いたいと思ったのだ。
そして左手には、うっすらと遠くに利尻島、利尻富士の影が見えた。これまでこの地を4度訪れ、都度いろいろなアングルから試みたが、本土から利尻を眺めることは一度たりともできなかった。5度目の正直、その島影も少しして消えてしまったから、まさに絶妙なタイミングでここに辿り着いたということになる。
そしてこれを取り過ぎれば最北の町、5度目の稚内だ。
5度目とはいえ、この道からアプローチするのは初めてだったから、市街地への進入は見たことのない景色で、いささか新鮮だった。
市内のとあるセイコーマートに入った。去年サハリンで世話になったFさんを訪ねるためだ。店頭にはいらっしゃらなかったが、店員さんに声をかけて連絡が取れると、5分ほどしてやって来られた。稚内に泊まるなら飲みに行ったのにねぇ…と残念そうだった。時間の都合とはいえ、残念だった。
ロシア行きが決まったことも伝えると、じゃあもうロシア語はペラペラになるねと笑われた。どこまでロシアにのめり込めるかは分からないが、とにかく土産話をたくさん携えて、再びお目にかかりたいと思う。6回目の訪問が決まった。
Fさんと別れ、稚内駅の方へ車を走らせる。去年は健在だった旧駅舎は、予定通り取り壊されていて跡形もなく、代わりに最終的には再開発ビルの一部を形成する新しい駅舎が建っていた。ちょうど札幌行きの特急列車が発車を待っているところで、待合室は旅行者やビジネスマンと思しき人々で賑わっていた。
風情云々の話をすればどうしても新駅舎バッシングになってしまうが、サハリン旅行記の中で書いたように、地域経済を浮上させるきっかけになってもらえればと思う。それが第一だ。
一路宗谷岬を目指す。稚内に来たら宗谷岬へ行かないと気が済まないし、何度行ってもいい。ましてや今回は今の車に最北端を極めさせるという目的がある。
時刻は18時近く。夕暮れ時に宗谷岬を訪れたのは初めてかもしれない。その意味では初めて見る景色だ。岬の近く、日本最北端のスタンドで給油した。燃費は15.0km/l、少し落ちた。ここでは最北端給油証明書と、貝殻で作った交通安全御守をもらえる。デルソルで訪れたときの御守は大事に車内に取ってあって、これで2つ目だ。
Fさんの勧めで、宗谷丘陵を縦に貫く道を通ってみることにした。6年前のツーリングマップルでは舗装化工事中につき通行止とあった道が、今は1kmほどの未舗装区間を残して通れるようになっているらしい。
なだらかな傾斜が続く丘は斜陽を受けて橙色に輝き、いくつも風車が立ち並ぶ様は幻想的ですらあった。そんな景色を存分に楽しみながら、小気味良いスピードで丘の上を駆け抜けていった。
この道を走っていくと、オホーツク海側の国道238号に出る。もう既に日は沈みかけていたが、明日のことを考えて今日はもう一頑張りせねばならない。
浜頓別まで238号線を走り、そこから音威子府へ国道275号線で抜けた。ここの交通量は皆無で、そして人家はおろか灯り一つない峠を夜に越えるのは心細さを感じた。そしてヘッドランプに群がる大量の虫がバンパーに叩きつけられ、酷い面構えになってしまった。
音威子府からは国道40号線をひたすら南へ走る。途中に天塩川温泉があり、宿泊もできる村営の施設が一軒ある。もっとも源泉の温度は8.7℃だというから、温泉ではなく鉱泉である。
ここで一休みして、しばらく走ると名寄である。稚内からしばらくぶりの「市」だが、時間が時間だけに中心市街地は静まり返っていた。食事は国道沿いのすき屋で取った。日本中どこにでも24時間飯が食える店があるというのは、それはそれで凄いことだと思う。
ラストスパート、今日は旭川まで走ることにした。道内第二の都市はそれなりに明るかった。こびりついた虫の死骸をセルフ洗車で落とし、旭川の隣の当麻町内にある道の駅「とうま」の駐車場に車を停める。今日は車中泊だ。近年は車中泊がちょっとしたブームだというが、ここでもご多分に漏れず、一夜を明かす道外ナンバーの車が何台も停まっていた。

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