姥湯・滑川への最寄り駅がJR奥羽線の峠駅である。前回も旧駅を探索したり、名物力餅を食べたりしたが、時刻表を調べてみると1日上下6本ずつしかない普通列車がもうすぐ来るという。前回見逃した、力餅の駅売りが見られるかもしれない。
そう思ってホームの待合室で列車の到着を待っていると、到着時間の数分前に法被を着た売り子さんがやって来た。やがて2両編成の列車が到着すると、一番前と後ろのドアだけが開き、何人かの乗客が後ろの乗降口越しに力餅を直接買い求めていた。そのあと売り子さんは「ちか〜ら〜もち〜」と言いながら列車の先頭まで歩いていき、これ以上お客がいないと分かると、車掌さんに向けて合図する。車掌さんも勝手知ったりで、その合図を待ってドアを閉め、列車を発車させた。
窓越しに力餅を売り歩いていたときのやり方そのままなのだろう。かつて峠を越える列車が全て足を止めていた頃の情景が目に浮かぶようだった。
そして売り子さんの後を追って、茶屋の軒先で再び力餅を頂いた。今度は更に雑煮も頼むことにした。特産、名産というわけではないが、山の味覚たっぷりといった感じで美味かった。出汁の一滴まで残らず頂いた。最後に土産用に力餅を2つ包んでもらい、ここを後にした。
本当に、心底満足した。もう家路を急ごうと決めた。13号線で福島市に下り、福島飯坂インターから東北道に乗る。インター直前のスタンドで給油するのは忘れずに、日が傾きかけた高速を東京目指して駆け抜けた。
【おわり】